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時候のご挨拶

メガネと楽譜

2023年5月22日

司会をさせて頂く時、会場の皆様に、例えば今月五月であるならば「青葉若葉、樹々の緑が目にしみる、心地よい季節を迎えました・・・」、その様な言葉を紡ぎながらご挨拶をして本題に入ることがあります。


小雨が降っていれば「雨に洗われた若葉の緑が、色鮮やかに輝いて居ります」、少し暑い様なら「日差しは初夏を感じさせるほどに・・」、別に「只今より○○を始めます・・」でも構わないのですが、司会者の『性』なのでしょうか、何か言いたくなってしまいます。


 先日ある若者に五月時候の言葉「薫風(くんぷう)の五月」と云ったらピンとこなかった様子で、「風薫る五月ですね」と言い換えたら「それなら知ってる!」。メールが普及して言葉がどんどんカットされてしまう時代になりました。若いスタッフからのメールなど、それでも気は遣ってはいるのでしょうが直ぐに理解ができない文体も結構多いと感じるのは私だけでしょうか。


 短くても伝われば良いのですが、意味不明だからまた確認で打ち返す、逆に時間の無駄さを感じます。俳句は世界で一番短い詩と言われます、今の季節を代表する〈目に青葉 山ほととぎす 初鰹・山口素堂〉、[青葉・ほととぎす・初鰹]と季語が通常タブーの三つ入っているのですが、五感の[目と耳と口]が揃っている有名な作品です。


短くても誰にでも必ず伝わる言葉選びが喋り手には必要、人前でお話をする以上常に研究ですね。

(隔週月曜日掲載、日本司会芸能協会副会長)

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